EAP・相談窓口

中小企業でEAPの代わりに使える支援と組み合わせ方

中小企業がEAP以外で従業員の相談体制を整えるには、公的な産業保健支援や個別のカウンセリングなどをどう使えばよいか。各手段の役割と、組み合わせる際に会社が決めておくことを解説します。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • EAPとして複数の支援をまとめて契約する以外にも、公的な産業保健支援や個別のカウンセリングなど、必要な役割ごとに支援を選ぶ方法がある
  • 従業員本人の相談、会社への助言、研修は役割が異なる。どれか一つで全体を置き換えられるとは限らない
  • 複数の支援を使う場合は、相談後に職場で対応する担当者と、本人の情報を共有する範囲を決めておく

従業員の相談先は用意したい。けれど、相談や研修をまとめて頼むEAPの契約が、自社に本当に必要か迷う場合もあるでしょう。公的な支援や個別のカウンセリングなど、必要な役割ごとに選ぶ方法もあります。

EAPは従業員支援プログラムのことです。代わりの手段を探すときは、本人の相談と、会社が対応に迷ったときの相談を分けて考えると選びやすくなります。窓口の名前や料金だけでなく、誰のどんな困りごとを受けてもらうかが比較の基準です。

EAP以外で使える支援を役割で比べる

次の表は、支援を選ぶ際の目安です。実際に頼める仕事は、各機関の案内や専門家との契約で確認します。

選択肢 主に相談・依頼すること 別に確認すること
公的な産業保健支援 健康相談、職場のメンタルヘルス対策への助言 個別の相談を継続して受けられるか
個別のカウンセリング 本人の悩みを聴き、対処を一緒に考えること 管理職の相談や職場との連絡も頼めるか
医師・保健師への相談 健康状態を踏まえた助言 業務量や勤務時間についての助言と連絡方法
研修 セルフケアや部下対応の知識を学ぶこと 研修後に個別の相談が出たときの相談先

公的な支援を使う

労働者健康安全機構の地域産業保健センターは、労働者の健康管理に関する相談などを担います。産業保健総合支援センターは、産業保健に関わる人への専門的な相談・研修や、事業場のメンタルヘルス対策の導入支援を行います。

会社の体制づくりについて助言がほしい場合も、公的支援を候補にできます。窓口の案内は、労働者健康安全機構のさんぽセンターのサービス(外部サイト・新しいタブで開きます)にあります。自社が依頼したい内容を伝え、受けられる支援を確かめることから始められます。

カウンセリングを個別に利用する

従業員が悩みを話せる相談先を用意したいなら、外部のカウンセラーに相談を依頼する方法があります。会社が相談費用を負担する形を検討する際は、予約方法や、会社を通さずに申し込めるか、会社に何が報告されるかを確認します。

本人の相談だけを依頼した場合、管理職が部下への対応を相談できるとは限りません。会社への助言も必要なら、その役割を同じ専門家に頼めるか、別の相談先を用意するかを決めます。相談の中身は、職場ガイド「カウンセリングとは」で解説しています。

医師・保健師への相談や研修を組み合わせる

健康状態と仕事の関係について助言が必要なら、産業医や保健師などへの相談を検討します。医療機関での診断・治療が必要な場合は、本人の受診につなぎます。本人の治療と並行して、会社も業務量や働き方の調整を検討します。

管理職に声のかけ方を学んでもらいたいなら、研修を依頼する方法があります。研修を受けた後も、個別の対応で迷う場面はありえます。部下の不調に気づいた管理職が誰に相談するかも決めておきます。

組み合わせるときは、相談後の職場対応まで決める

例えば、従業員本人は外部のカウンセラーに相談し、人事担当者は公的な産業保健支援で体制づくりの助言を受ける組み合わせが考えられます。これは運用の一例であり、各窓口が自動で連絡を取り合うわけではありません。

会社では、支援を選ぶときに次の点を決めます。

  • 従業員が相談する先と、経営者・管理職が対応に迷ったときの相談先
  • 本人から仕事上の配慮を求められたときに、話を受けて調整する社内担当者
  • 外部の専門家と会社が連絡する必要が出たときの、本人への説明と同意の取り方
  • 希望する支援を受けられなかったときに、次の相談先を確認する担当者

相談内容を会社に詳しく報告してもらうことと、必要な職場対応を進めることは同じではありません。 例えば業務量の調整を考えるなら、本人と確認した仕事上の困りごとや配慮事項をもとに検討できます。会社が相談費用を負担する場合も、相談の詳細を会社が当然に受け取れる形にはしないでおくほうが、従業員は安心して相談できます。

厚生労働省の指針は、外部の支援を利用する際にも、社内の担当者を窓口として連携することや、個人情報の扱いに気をつけることを求めています。情報の扱いの詳細は、職場ガイド「中小企業の相談窓口・EAPの守秘義務」にまとめています。

複数の相談先への依頼や連絡が、社内担当者の負担になる場合は、その調整も含めて支援を頼めるかを確認します。必要な役割を個別にそろえる案と、EAPとしてまとめて頼む案を比べる材料になります。契約前の確認項目は、職場ガイド「中小企業の相談窓口・EAPの選び方チェックリスト」で確かめられます。

※ 出典: 独立行政法人労働者健康安全機構「さんぽセンターのサービス」、2026年9月19日閲覧。厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」、2015年11月改正、2026年8月6日閲覧。公的支援の内容は前者、外部資源の活用・社内との連携・個人情報の保護は後者によります。役割の比較表と組み合わせ例は、これらを踏まえた運用上の提案です。

※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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