EAP・相談窓口

EAPにはどんな種類があるか

EAPは運営主体(内部型・外部型・併用型)と対応範囲によって中身が異なります。50人未満の会社にとって現実的な選択肢がどれか、違いを整理して解説します。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • EAPは運営主体で内部型・外部型・併用型に分かれる。内部型と併用型は専門職を雇える規模が前提で、50人未満では外部型がほぼ唯一の選択肢
  • 外部型は社外の第三者が対応するため、従業員が「会社に知られるのでは」という不安を抱きにくく、自社で専門人材を抱える必要もない
  • 相談対応が中心のサービスは、管理職への助言・研修・危機対応が乏しければ実質は外部相談窓口に近い。外部型の中でも対応範囲の幅は大きい
  • ストレスチェックは50人未満の事業場にも義務化される(施行日は2028年4月1日に確定)。実施そのものの支援まで対応範囲に含むかは事業者によって分かれる

EAPを検討し始めると、事業者ごとに説明の仕方も価格帯もばらばらに見えて戸惑うことがあります。原因の一つは、「EAP」という同じ言葉の下に、運営主体や対応範囲が異なる複数の型が並んでいることです。比較を始める前に、まずこの違いを知っておくと、自社に合わない選択肢を早い段階で除外できます。

運営主体による分類 — 内部型・外部型・併用型

EAPの提供形態は、誰がサービスを運営するかで大きく3つに分かれます。

内容 向いている会社の規模
内部型 産業医・保健師・カウンセラー等を自社で雇用し、社内に相談窓口を置く 専任人材を継続的に雇用できる大企業
外部型 社外のEAP事業者と契約し、相談対応や研修を委託する 専任人材を置く余裕のない中小企業を含む幅広い規模
併用型 本社機能には内部の専門職を置きつつ、他拠点は外部の事業者に委託する 複数拠点を持ち、拠点ごとに体制を使い分けられる大企業

内部型は、従業員がすぐ相談できる距離感や、自社の業務内容・組織風土を踏まえた対応がしやすい一方、専門人材を常時雇用する人件費がかかります。外部型は、社外の第三者が対応することで従業員が「会社に知られるのでは」という不安を抱きにくく、自社で専門人材を抱える必要もありません。併用型は両者の利点を組み合わせられますが、その分だけ体制の設計と管理も複雑になります。

中小企業にとっての現実 — 外部型が基本の選択肢

内部型は、産業医・保健師・カウンセラー等の専門職を継続的に雇用する体制が前提になります。50人未満の会社でこの体制を維持できるところはまれで、外部型がほぼ唯一の選択肢になります。併用型も、拠点ごとに内部・外部を使い分けられるだけの規模がある会社向けの形態のため、同様に当てはまりにくいところです。

「では自社に外部型EAPは本当に必要なのか」という手前の疑問については、EAPとは — 従業員支援プログラムの基本で、EAPという仕組み自体の成り立ちと中小企業での使いどころを解説しています。

外部型の中でも、対応範囲によって違いがある

外部型と一口に言っても、事業者によって対応する範囲には大きな幅があります。この幅は、EAPとは — 従業員支援プログラムの基本で解説した「相談窓口とEAPの違い」(相談対応だけの窓口か、会社側への支援まで含む仕組みか)が、事業者間の違いとしてもそのまま現れたものです。

相談対応が中心のサービス

  • 電話・チャット・オンライン面談等で従業員からの相談を受けることが中心
  • 低コストで導入しやすいのが特徴
  • 管理職への助言・研修・ストレスチェックの支援・危機対応が乏しい場合、実質的には外部相談窓口に近い

相談と会社支援の両方を備えたサービス

  • 相談対応に加え、経営者・管理職への助言、研修・教育まで提供
  • ストレスチェック等の支援、緊急時の危機対応まで含むことが多い
  • 会社への利用状況レポートまで一体で提供

EAPが典型的に持つこれらの機能の全体像は、EAPとは — 従業員支援プログラムの基本の一覧表にまとめています。

対応範囲の違いが実務に与える影響

この違いは、契約してから「思っていた支援が受けられない」というギャップにつながりやすい部分です。特に、次の2つの法令対応を念頭に置いている場合は、契約前に確認しておく価値があります。

  • ハラスメント相談窓口の設置は、企業規模を問わず事業主の義務です(2022年4月〜)。相談対応が中心のサービスでも窓口という形自体は作れますが、実際に相談が寄せられたときに会社としてどう対応すべきかという助言まで受けられるかどうかは、事業者によって差があります
  • ストレスチェックは50人未満の事業場にも義務化されます(2025年5月公布の改正労働安全衛生法。施行日は2028年4月1日に確定)。実施そのものの支援まで対応範囲に含む事業者もあれば、含まない事業者もあります

検討中の事業者が実際どこまで対応するのかを確認するための具体的な項目は、中小企業の相談窓口・EAPの選び方チェックリストにまとめました。

まとめ

50人未満の会社であれば、まず外部型を軸に検討を進め、そのうえで各事業者の対応範囲(相談対応が中心か、会社側への支援まで含む仕組みか)を比較する、という順序で絞り込むのが現実的です。運営主体と対応範囲、2つの軸で見比べると、自社に合う事業者かどうかの判断がしやすくなります。

※ 出典: Employee Assistance Professionals Association「2010 Edition EAPA Standards and Professional Guidelines for Employee Assistance Programs」「Service Delivery Systems」(内部提供・外部契約・拠点ごとの併用等、提供形態の例示)。表の「向いている会社の規模」は、これらの提供形態の例示を踏まえた本記事側の整理であり、出典中の個別の事例(外部型の事例は中規模企業が対象)そのものではありません。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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