ライフイベントと仕事の両立

育児・介護と仕事の両立を支える、上司・同僚にできること

育児をしている人のうち85.2%、介護をしている人のうち58.0%が働きながらその役割を担っています。この差はなぜ生まれるのか、上司・同僚が日常でできる配慮と、2025年に施行された育児・介護休業法改正のポイントを整理します。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • 育児をしている人のうち85.2%、介護をしている人のうち58.0%が働きながらその役割を担っている。両立は例外的な事情ではない
  • 育児は準備期間があり見通しが立つが、介護はある日突然始まり、いつまで続くか分からない。本人も言い出しにくく一人で抱え込みやすい
  • 2025年4月の育児・介護休業法改正で、子の看護等休暇は小学校3年生修了まで広がり、介護では会社から制度を個別に知らせることが義務になった
  • 早退や時短の分の業務は周囲の同僚が引き受ける。特定の同僚にしわ寄せが偏らないよう、チーム全体で業務を分散できる仕組みにしておく

チームの中に、子育てをしながら働く社員や、親などの介護をしながら働く社員がいることは、いまや珍しいことではありません。総務省「就業構造基本調査」によれば、育児をしている人のうち85.2%、介護をしている人のうち58.0%が働きながらその役割を担っています。両立は例外的な事情ではなく、多くの職場にすでにある前提です。

育児と介護は、支え方が違う

育児と介護は、どちらも「仕事の外に大きな役割を抱える」という点では共通していますが、上司・同僚が気をつけたい点は異なります。

育児

  • 妊娠・出産という始まりがあり、準備期間がある。
  • 復職時期や成長の見通しが、ある程度立てられる。
  • 本人にとって周囲に伝えやすい事情であることが多い。

介護

  • 親などの急な入院・要介護認定など、ある日突然始まることが多い。
  • 回復の見通しが立たず、いつまで続くか分からない。
  • 本人が言い出しにくく、一人で抱え込みやすい。

なお、育児と介護が同時期に重なる「ダブルケア」の場合は、それぞれの配慮を単純に足し合わせるだけでは対応しきれない面があります。詳しくは育児と介護が重なる「ダブルケア」と仕事の両立支援を参照してください。

この違いは、育児・介護をしている人のうち有業者の割合の差にも表れています。

育児・介護をしている人のうち、有業者の割合

育児・介護をしている人のうち、有業者の割合
区分割合
育児をしている人85.2%
介護をしている人58.0%

(総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」, 2023年)

介護をしている人の有業者の割合が育児より20ポイント以上低いのは、本人の意欲の差ではありません。見通しの立たなさと、周囲に相談しにくいという事情が重なり、両立を諦める判断につながりやすいためだと考えられます。もっとも、介護をしている人には退職後の年代も多く含まれるため、この差の一部は年齢構成の違いによるものでもあります。だからこそ、介護については「本人から言い出すのを待つ」のではなく、会社の側から情報を届ける姿勢が求められます。

育児と仕事の両立で、上司・同僚にできること

育児との両立は、子どもが生まれてから始まるわけではありません。妊娠中の従業員については、健康診査を受ける時間の確保や、医師の指導に沿った業務の調整が法律上の義務として定められています(妊娠中の従業員への配慮)。

育児・介護休業法は2025年4月と10月に段階的に改正が施行され、育児との両立を支える制度が拡充されました。

  • 子の看護休暇の対象が、小学校就学前から小学校3年生修了までに広がった(2025年4月施行。名称も「子の看護等休暇」に変更)
  • 所定外労働の制限(残業の免除を請求できる制度)の対象が、3歳未満の子から小学校就学前の子まで広がった(同)
  • 3歳未満の子を養育する社員がテレワークを選べるよう、会社側に努力義務が課された(同)
  • 3歳から小学校就学前の子を養育する社員向けに、会社は柔軟な働き方の選択肢(テレワークや時差出勤等)を複数用意する義務を負うことになった。会社は、3歳未満の子を養育する社員に対しては、その子が3歳になるまでに、用意した選択肢を個別に周知し、利用の意向を確認する義務も負う(2025年10月施行)

制度の存在を知っているだけでは、実際には使われません。上司・同僚が日常でできることは、次のような小さな配慮です。

  • 保育園からの急な呼び出しなど、予定外の早退・欠勤が起きうる前提で、業務の締め切りに余裕を持たせておく
  • 自分の担当業務を他の人が代われるよう、日頃から進捗や手順を見える形にしておく(本人だけでなく、チーム全体の運用として)
  • 時短勤務や在宅勤務を選んだ社員に対して、評価や人員配置の説明を曖昧にしない。何を基準に評価しているかを明確にしておくことが、本人の不安と周囲の疑問の両方を減らす

介護と仕事の両立で、上司・同僚にできること

介護は「ある日突然始まる」という特性があるため、法改正でも会社側から早めに動く仕組みが強化されました。

  • 会社は、社員が介護に直面したという申し出を受けたとき、介護休業制度・介護両立支援制度・介護休業給付金の内容を個別に周知し、利用の意向を確認することが義務づけられた(2025年4月施行)
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳到達前後の1年間を想定)でも、同様の情報提供を行うことが義務づけられた(同)
  • 会社は、介護休業・介護両立支援制度に関する研修の実施、相談窓口の設置、利用事例の共有、利用促進方針の周知のいずれかに取り組むことが義務づけられた(同。雇用環境整備の義務)
  • 介護休暇の取得要件が緩和され、継続雇用期間6か月未満という理由での除外ができなくなった(同)
  • 要介護状態の家族を介護する社員がテレワークを選べるよう、会社側に努力義務が課された(同)

法改正の背景にあるのは、「介護は本人から相談があるまで待つ」という姿勢が離職につながってきたという認識です。上司・同僚が日常でできることも、同じ方向を向いています。

  • 40歳前後の社員向けの研修や案内があれば、それとは別に、日頃の会話の中で「何かあれば早めに知らせてほしい」と伝えておく
  • 介護休暇や介護休業の取得を、突発的な欠勤ではなく想定内の出来事として扱う。取得実績があれば、本人の同意を得たうえで社内に共有することも、次に直面する人の助けになる
  • 症状や要介護度など、業務上必要のない詳細まで聞き出そうとしない。必要なのは「どのくらいの頻度で、どんな配慮が要るか」であって、家族の病状そのものではない

上司の役割は、解決することではなく、抱え込ませないこと

育児であれ介護であれ、上司や同僚がケアプランを立てたり、専門的な判断を下したりする必要はありません。上司の役割は、本人が一人で抱え込む前に、会社の制度や外部の専門窓口につなぐことです。

避けたい対応もあります。

  • 家庭の事情を必要以上に詮索する
  • 「頑張って両立してね」と励ますだけで、業務量や体制の調整を先送りにする
  • 本人が言い出すまで、会社側からは何も情報を出さない

これらはいずれも、本人に「自分で何とかしてください」というメッセージとして伝わりかねません。まずは、制度を使うことが評価や関係に不利に働かないという姿勢を、上司自身の言葉と行動で示すところから始まります。

周囲の同僚への目配りも欠かせない

育児・介護と仕事の両立を支えることは、当事者本人だけの問題ではありません。誰かが早退・欠勤する、あるいは時短勤務を選ぶと、その分の業務は周囲の同僚が引き受けることになります。

  • 誰か一人が代わりに担う体制ではなく、チーム全体で業務を分散できる仕組みにしておく。特定の同僚にしわ寄せが偏ると、その人自身の負担が積み重なり、新たな不調につながりかねない
  • 配慮が必要な理由まで詳細に説明する必要はなくても、「なぜこの配慮をしているか」という会社としての方針は、周囲にも共有しておく。理由が見えないまま特定の人だけ扱いが違うと感じられると、不公平感が募りやすい
  • 業務の属人化を普段から避けておくことが、結果的に育児・介護に限らず身内を亡くした従業員への対応など、あらゆる休みへの備えになる

両立支援は、当事者への配慮と、周囲の負担への目配りを同時に行って初めて、無理なく続く仕組みになります。

50人未満の会社では、公的な支援を組み合わせる

ここまで挙げてきた配慮は、人員にも予算にも限りがある50人未満の会社にとって、口で言うほど簡単ではありません。代わりに担える人が本当にいない、という現実もあります。だからこそ、社内の工夫だけで抱え込まず、公的な支援制度と組み合わせて考えることが現実的です。

  • 厚生労働省の「両立支援等助成金」には、育児休業・介護休業を取得した社員の業務を代わりに担う周囲の社員へ手当を支給した場合や、代替要員を新たに雇用した場合に受け取れる助成があります。育児の場合は業務体制の整備と手当支給を合わせて最大140万円、介護の場合は業務代替者への手当支給に3万〜5万円などのコースがあります
  • この助成金の対象となる「中小企業」の範囲は業種によって異なりますが、常時雇用する労働者が50人以下であれば、業種を問わずいずれの基準でも対象に含まれます
  • 介護に直面した社員がどこに相談すればよいか分からない場合、地域包括支援センター(介護保険法に基づき市区町村が設置する、高齢者福祉の総合相談窓口。全国に設置されており相談は無料)を案内する方法もあります。会社の中だけで抱え込む必要はありません

制度や体制をゼロから自社だけで作ろうとせず、使える公的支援を組み合わせることが、限られた人員でも両立支援を続けるための現実的な出発点になります。

※ 出典: 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(2023年7月21日公表)。厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の改正、2025年4月1日・10月1日施行)。厚生労働省・都道府県労働局「2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内」。地域包括支援センターは介護保険法第115条の46に基づく制度。本ガイドは一般的な解説であり、個別の制度適用は所轄の労働局や社会保険労務士等にご確認ください。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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