EAP・相談窓口

部下対応や職場の課題、管理職・人事はEAPに何を相談できるか

EAPのコンサルテーションとは、管理職・人事担当者に向けた専門的な助言のこと。カウンセリングとの違い、部下対応の個別相談と組織全体への助言という2つの場面、実行の判断は誰が担うかを解説します。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • コンサルテーションは、特定の部下への対応についての個別相談と、組織全体の方針・出来事についての助言の2つを必須の項目として挙げている(EAPA基準)
  • 管理職・人事担当者が自分自身のことで相談するときはカウンセリング。部下や組織の課題について相談するときはコンサルテーション
  • コンサルテーションは会社の判断を代行するものではなく、実行の決定と責任は会社側にある
  • この機能をどこまで備えているかは事業者によって差があり、相談対応が中心のサービスでは十分に受けられないこともある

EAPというと、従業員が困ったときに相談する窓口(カウンセリング)を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかしEAPには、管理職や人事担当者が部下対応や職場の課題について専門家に助言を求める仕組みも含まれます。これを「コンサルテーション」と呼びます。カウンセリング(外部カウンセリングとは)が扱うのは相談する人自身の悩みで、管理職・人事担当者が自分自身のことで相談するときもカウンセリングです。コンサルテーションが扱うのは、部下への対応や職場の課題——管理職としての仕事の進め方のほうです。本来はEAPの標準的な機能ですが、実際にどこまで充実しているかは事業者によって差があり、相談対応が中心のサービスでは十分に受けられないこともあります(EAPにはどんな種類があるか)。契約前に確認すべき点は中小企業の相談窓口・EAPの選び方チェックリストにまとめています。

コンサルテーションで扱う2つの場面

国際的なEAPの業界団体EAPA(Employee Assistance Professionals Association)が定めた基準は、相談対応・危機介入(緊急時の対応)と並ぶ必須の項目として、組織のリーダー向けの相談と、組織そのものへの助言という、内容の違う2つを挙げています。

1つは、特定の部下への対応についての個別の相談です。管理職1人・1つのケースについて、問題を抱える従業員への接し方、公平で筋の通った対応の仕方などを、そのたびに相談します。たとえば、治療を経て職場復帰する部下について、同僚の反応を心配している上司に助言する、という場面が挙げられます。

もう1つは、組織全体の方針や出来事についての助言です。特定の部下ではなく、職場全体に関わる課題が対象になります。たとえば、組織再編や人員整理が従業員に与える心理的な影響について管理職向けの研修を行うこと、職場でストレスの原因になっているものを見つける支援などが挙げられます。

この2つのどちらに当てはまるかを、事前にきっちり分ける必要はありません。大事なのは、今困っていることを自分の言葉にしておくことです。うまく整理できないときは、その整理自体を一緒に進めてもらうこともできます。

実際にどう相談が始まるか

多くの場合、管理職・人事担当者自身が、従業員向けの相談窓口とは別の窓口(電話・オンラインなど)を通じて連絡します。「部下の様子が気になる」「休職者の復職時期をどう伝えればいいか」というように、対応に迷った具体的な場面を伝えるところから始まります。

予約が必要か、いつでも相談できるかは事業者によってやり方が違います。実際に対応に迷う場面は突然訪れるため、契約時にこの窓口の使い方を確認しておくと安心です。

助言と実行 — 決めるのは会社

コンサルテーションは、会社の代わりに判断を下すものではありません。EAPA基準が示す個別コンサルテーションの中身も、問題を抱える従業員へどう関わるかについての助言・コーチングであり、実行するかどうかの決定そのものではありません。

厚生労働省の指針も、事業場外資源(外部の専門機関)に頼りすぎることには注意が必要だとしています。メンタルヘルスケアを進めるのは自分たちの仕事だという意識を、事業者が失わないようにするためです。

コンサルテーションを受けたあと、実際にどう動くか、誰にどう伝えるかを決めるのは、あくまで管理職・会社側です。

部下対応や組織の課題について専門家の視点を借りられることは、コンサルテーションの大きな価値です。ただし、それは会社の代わりに判断するものではなく、判断のための材料を用意する仕組みです。この役割分担を最初に理解していれば、「相談すれば解決してもらえる」という期待とのずれは起きません。

※ 出典: コンサルテーションの2つの分け方は、いずれもEmployee Assistance Professionals Association「2010 Edition EAPA Standards and Professional Guidelines for Employee Assistance Programs」(2011年4月18日採択)内で、相談対応・危機介入などと並ぶ「EAP直接サービス」の必須要件(shallの語で定められています)です。個別コンサルテーションの対象は、業務パフォーマンスや行動・医学上の問題を抱える部下について、その管理とEAPへの紹介を組織のリーダーに助言することと定められています。EAPAは米国に本部を置く専門家の団体で、この基準は法令ではありません。事業場外資源を使うときに事業者が「自分たちの仕事だ」という意識を失わないよう気をつけるべきだとする記述は、厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日 健康保持増進のための指針公示第3号、平成27年11月30日 同第6号により改正)の5「4つのメンタルヘルスケアの推進」(4)事業場外資源によるケアによる。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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