相談・活用の事例

ハラスメントの訴えを受けた人事担当者の相談

従業員からハラスメントの訴えを受けた人事担当者が、事実確認や公正さの判断を一人で抱え込みそうになりながら、カウンセラーに相談した例をまとめました。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • 訴えを受けた人事担当者は、誰の味方をすればいいか分からないまま、事実確認・当事者への配慮・公正さの判断を一人で背負いがちである
  • 訴えた人を守ることと、まだ疑いの段階にある相手に公正であることは、対立する役目ではなく、どちらも人事が大切にする姿勢
  • 相談は、対応の手順を代わりに決めてもらう場ではなく、抱えている重さを整理する場になる
  • 対応の手順を完璧に整えてから動く必要はない。判断の重さを話せる相手を持っておくことが助けになる

従業員40名ほどの会社で人事を担当するDさんは、ある日、営業部の社員から「上司の言い方がきつく、仕事に行くのがつらい」と打ち明けられました。ハラスメントに関わる相談を受けるのは、これが初めてでした。

経緯 — 何から手をつければいいか分からなくなる

ハラスメント相談窓口の設置義務は知っていても、実際に社員から名指しで相談を受けると、何から手をつければいいのか分からなくなるものです。

相談してきた社員は、何があったかを落ち着いて話してくれましたが、最後に「あまり大ごとにはしたくない」と付け加えました。Dさんは、その言葉をどう受け止めればいいか迷いました。訴えを聞いた以上、放置していいはずがありません。一方で、本人が望まない形で調べが進めば、余計に追い詰めてしまうのではないかという不安もありました。そのうえ、名前が挙がった上司は、社内でも評価の高い管理職でした。事実を確かめることが、社内の空気にどう影響するかも気にかかりました。

相談 — カウンセラーに、抱えている重さを話す

Dさんは、対応の進め方そのものより、自分がどう振る舞えばいいか分からなくなっていることを、カウンセラーに相談しました。話してみると、カウンセラーが聞きたがったのは、事実確認の進め方ではなく、Dさんが「誰の味方をすればいいのか」という重さを、どれだけ一人で背負っていたかということでした。

訴えた社員を守りたい気持ちと、名前が挙がった上司にも公正でありたい気持ちは、対立するものではなく、どちらもDさんが人事として大切にしたい姿勢だと、話しながら気づいていきました。事実を確かめることと、どちらか一方の味方になることは別だと分かると、少し肩の力が抜けていきました。

その後の経過

Dさんは、相談してきた社員に、話の内容がどこまで・誰に伝わるかを先に説明しました。伝わる範囲をあらかじめ示したことで、本人も事実確認そのものには応じる気持ちになれたようです。名前が挙がった上司にも、決めつけずに話を聴く姿勢で臨みました。

結論を急がず、時間をかけて事実確認を進めました。判断に迷う場面は今後も出てくるだろうと感じつつ、Dさんは一人で抱え込まなくていいのだと思えるようになっていました。

対応のポイント

誰の味方をすればいいか分からないまま、人事担当者が事実確認と当事者への配慮のすべてを一人で背負う必要はありません。事実を確かめる役割は人事が引き受けながら、その重さを話せる相手を別に持っておくことができます。

同じように訴えを受けて迷っている場合も、対応の手順を完璧に整えてから動く必要はありません。誰の味方をするかで迷う気持ちも、一人で抱え込まず話してみることが、判断の重さを支えてくれます。

※ 相談の実際の流れをもとに、個人や企業が特定されない形で構成した例です。特定の実在の相談ではありません。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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