会議で誰も反対意見を言わない。それが「みんな納得している」からなのか、「言っても無駄だと諦めている」からなのか、見ているだけでは区別がつかない。
心理的安全性は、こうした職場の雰囲気そのものを指す言葉です。感覚だけで「うちは大丈夫」と判断してしまうと、実際には発言を諦めているメンバーがいても、誰も気づけないまま時間が過ぎていきます。感覚ではなく、具体的な質問に置き換えて確認する方法があります。
心理的安全性を測る7つの質問
心理的安全性をチームレベルの概念として定義したのは、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソンです。1999年の研究で、心理的安全性を測るための7つの質問を作りました。以来、心理的安全性を測る代表的な方法として使われ続けています。
| # | 質問 | 当てはまると |
|---|---|---|
| 1 | このチームでは、ミスをすると、それを理由に責められることが多い | 心配な兆候 |
| 2 | このチームのメンバーは、問題や難しい課題を話題にできる | 望ましい兆候 |
| 3 | このチームでは、人と違うことを理由に相手を拒むことがある | 心配な兆候 |
| 4 | このチームでは、リスクのある行動を取っても安全だ | 望ましい兆候 |
| 5 | このチームのメンバーには、助けを求めにくい | 心配な兆候 |
| 6 | このチームには、自分の努力を意図的に台無しにするような人はいない | 望ましい兆候 |
| 7 | このチームでは、自分ならではのスキルや強みが評価され、活かされている | 望ましい兆候 |
それぞれの項目に、「まったく当てはまらない」から「非常によく当てはまる」までの7段階で答えます。細かい段階にこだわらず、この7つを一つずつ立ち止まって考えるだけで、どの項目に不安があるかが具体的に分かります。
上の表のとおり、当てはまるほど心配な質問と、当てはまるほど望ましい質問が混ざっています。エドモンドソンは、回答が一方向に偏らないよう、あえて向きの違う質問を混ぜたと説明しています。
アンケートとして使うとき
7つの質問をチームのメンバーにアンケートとして配るなら、匿名性の設計が最も重要になります。回答者が特定されると分かっていれば、率直な回答は返ってきません。
匿名性の作り込み方、質問の言い回し、実施の頻度といった運用面は、従業員の状態を把握する社内アンケートの作り方にまとめてあります。心理的安全性のアンケートも、匿名性を守る設計という点では同じ注意が要ります。
このアンケート自体、回答者が安心して答えられなければ意味がありません。「本音を答えると評価に響くかもしれない」と思われた時点で、回答は実際より良い数字に寄ってしまい、本当はどれだけ低いのか見えなくなります。
アンケートが機能しにくい少人数チームでの見極め方
集計の単位が数人まで絞られると、匿名のはずの回答から誰の意見か推測できてしまいます。詳しくは従業員の状態を把握する社内アンケートの作り方を参照してください。従業員が数名の会社では、そもそも匿名アンケートという形自体が機能しにくくなります。
匿名アンケートが機能する規模
- 7つの質問をそのままアンケートとして配れる
- 集計担当を分ける、外部委託するなどで匿名性を保てる
匿名アンケートが機能しにくい少人数
- 回答から誰の意見か推測できてしまう
- 経営者・管理職が自分の言動を7つの質問に照らして確認する
具体的には、次のような場面で、経営者・管理職自身の言動と、それに対する周囲の反応から、7つの質問が示す状態を確認できます。
| # | 経営者・管理職の言動の例 |
|---|---|
| 1 | ミスを報告してきたメンバーに、責める言葉より先に「教えてくれてありがとう」と返せているか |
| 2 | 「見落としはないか」と問いかけたとき、問題や難しい指摘が実際に返ってくるか |
| 3 | 自分とは違う見方をする人の意見も、最後まで聞いて受け止めているか |
| 4 | 新しい提案やリスクのある行動を持ちかけられたとき、頭ごなしに否定せず受け止めているか |
| 5 | 助けを求められたとき、頼ってくれてよかったと伝えられているか |
ただし、周囲から特に反応がないことを「問題なし」と読み違えないよう注意が必要です。反応が返ってこないこと自体が、声を上げても仕方がないという諦めのサインである場合もあります。
これらの問いは、リーダーが心理的安全性を作る3つの瞬間で扱った、異論・悪い知らせ・間違いを認める場面での振る舞いと重なります。数人規模の会社では、アンケートで数値を集める代わりに、経営者・管理職自身が日々のこうしたやり取りにどう応じているかを振り返ることが、最も現実的な測り方になります。
6・7番目の質問は、足の引っ張り合いがないか、強みが活かされているかを尋ねるもので、特定の瞬間ではなく、日々の仕事の任せ方や、周囲からの評価に表れます。
一度きりで判断せず、変化を追う
7つの質問は、一度答えて終わりにするものではありません。アンケートで確認する場合も、日々の言動から見極める場合も、その時点の一場面を示すものにすぎません。ある時点の結果が良いか悪いかそのものより、同じチームで時間を置いて同じ質問を繰り返し、変化を追うほうが実務上は意味を持ちます。
新しい制度を始めた後や管理職が代わった後、忙しい時期を乗り越えた後といった区切りに、同じ7つの質問でもう一度確かめれば、変化が良い方向に向かっているかどうかを確認できます。
低い項目が見つかった場合は、心理的安全性を高める3つの実践で扱った、仕事を学習の問題として位置づける・参加を促す・生産的に応答するという3つの働きかけが、次の対応になります。
※ 出典: Edmondson, A.C.(1999)"Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams." Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383。
※ 江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。