ストレスチェックや上司との1on1では拾いにくい悩みは、職場の外でどんな形をしているのか。
当社が運営するLINEで使える無料AIチャット相談の、2026年7月の実績を見ました。相談件数は117件(前月比▲28.2%)で、5月をピークに2か月続けて減っています。
一方で恋愛・夫婦への相談は全体の79.5%まで集中を強め、「職場の悩み」の相談は前月の2.7倍に増えています。
働く人のための職場メンタルヘルスサービス「WorkMind」では、こうした関係性と職場がつながっているという見方を、相談設計に反映させています。
データの背景
本データは、当社「恋愛と夫婦の悩み相談センター」が運営するLINEで使える無料AIチャット相談の利用ログを集計したものです。相談カテゴリの中には「職場の悩み」という区分もあり、恋愛・夫婦相談の窓口でありながら、仕事や職場に関する悩みが一定数持ち込まれている実態が見えます。
利用者の職業・雇用形態はデータに含まれないため断定はしませんが、相談者は10代〜60代以上と幅広い年代にわたっています。
- 対象データ:当社「恋愛と夫婦の悩み相談センター」が運営するLINE無料AIチャット相談の利用ログ
- 集計期間:2026年7月1日〜2026年7月31日
- 比較対象:2026年6月(前月)
- 集計対象:相談117件/利用者61人(重複を除いた人数)
- 出典:東京メンタルヘルス株式会社 SMB事業部(恋愛と夫婦の悩みAIチャット相談 利用実績データより集計)
1. 「見えない悩み」は恋愛・夫婦へ、さらに集中
カテゴリの内訳は「恋愛の悩み」65件(55.6%)、「夫婦・パートナーの悩み」28件(23.9%)で、両者合わせて79.5%を占めました。前月(66.9%)からさらに上昇しており、相談全体に占める関係性の悩みの比重は増しています。
一方、6月に大きく増えた「心身の健康」は30件から7件へ76.7%減少し、月によって持ち込まれる悩みの種類が大きく揺れ動くことがわかります。職場では「今月は落ち着いている」と見える月でも、水面下の悩みの中身は毎月入れ替わっている可能性があります。
2. 「職場の悩み」が2.7倍に——関係性の窓口にも仕事の影が
相談カテゴリのうち「職場の悩み」は3件から8件(6.8%)へ増加し、件数としては前月の2.7倍になりました。恋愛・夫婦の悩み相談の窓口でありながら、話しているうちに仕事や職場との関わりが混ざり込むケースが増えているとみられます。人間関係の悩みと職場のストレスは別々の窓口で語られるとは限らず、相談する側にとっては切り離せない一つの悩みであることがうかがえます。
3. 短い相談ではない——正午と深夜、2つの顔
平均相談時間は約193分で、30分を超える長時間の相談は44.4%(52件)でした。前月(約203分・51.5%)からはやや落ち着きましたが、依然として相談の半数近くが長時間に及んでいます。時間帯別では正午の12時台が12件で最多となり、深夜0時台も11件とほぼ並ぶ水準でした。曜日別では木曜・土曜がともに21件で最多です。業務時間の合間と深夜、2つの時間帯にニーズが分かれています。
4. 50名未満の組織にとっての示唆
2026年2月、厚生労働省は「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表しました。2028年4月施行の義務化を控えるものの、メンタルヘルス対策に取り組む事業所の中でもストレスチェックの実施率には規模差があり、50人以上の事業所で89.8%であるのに対し、30〜49人では57.8%、10〜29人では58.1%にとどまります。
今回、「職場の悩み」の相談は3件から8件へ増えました。関係性の相談のなかにも、仕事の影響が見え隠れしています。年1回の点検だけでは、拾いきれない領域があることを示しています。
匿名・即時のAIチャット相談は、まず話を受け止める場——一次受容——として位置づけています。そこで終わらせず、必要に応じて人とのつながりに戻っていけるようにすることを大切にしたいと考えています。
統計ハイライト
| 指標 | 7月 | 6月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 相談件数 | 117件 | 163件 | ▲28.2%(2か月連続の減少) |
| 恋愛・夫婦関連の割合 | 79.5%(93件) | 66.9% | +12.6pt |
| 「職場の悩み」の相談 | 8件 | 3件 | 2.7倍 |
| 長時間の相談率(30分超) | 44.4%(52件) | 51.5%(84件) | ▲7.1pt |
相談ピークは12時台12件・0時台11件で、曜日は木曜・土曜がともに21件で最多でした。
取締役 江原和比己 コメント
7月の相談件数は117件で、5月をピークに2か月続けて減少しました。ただ、わたしが目を引かれたのは件数よりも中身です。恋愛・夫婦への相談が全体の79.5%まで比重を増す一方、「職場の悩み」は3件から8件へと増えており、関係性の相談のなかに仕事や職場の話が混ざり込んでいる様子がうかがえます。
恋愛や夫婦の悩みと、職場のストレスは、本人のなかでは重なっていることが多いのではないかと感じています。ストレスチェックのような制度は職場内の要因を測る設計になっていますが、プライベートの悩みが仕事のパフォーマンスに影響する経路までは拾いきれません。今回のデータは、その拾いきれない部分の一端を示しているのではないかと見ています。
働く人のための職場メンタルヘルスサービス「WorkMind」では、こうした関係性と職場がつながっているという考え方を大切にしています。この考え方をもとに、AIチャット相談を一次受容として位置づける設計に生かしていきたいと考えています。働く人が「話してもいい」と思える入口を、職場の内側だけでなく外側にも増やし、その小さな一歩を応援していきたいと考えています。
※ 江原 和比己(えはら かずひこ)——東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。