バーンアウト・過重労働

バーンアウトの兆候の見分け方

バーンアウトは「疲れているだけ」と地続きに見えるため見過ごされやすい状態です。世界保健機関(WHO)の定義に基づく3つの兆候の切り口と、一時的な疲労・うつ病との違いを整理します。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • WHOの定義は疲労感、仕事への精神的な距離・シニシズム、職業上の効力感の低下の3つの次元。疲労感だけでは繁忙期の疲れと見分けがつかない
  • 一時的な疲労は繁忙期や締め切りに紐づき休めば回復するが、バーンアウトは時期を問わず、週末や休暇を挟んでも3つの兆候が続く
  • 具体的なサインは、これまで難なくこなしていた業務に時間がかかる、顧客や同僚への対応が事務的になる、「意味がない」といった発言が増える
  • バーンアウトは職業的文脈に特有の現象とされるが、精神医学的にはうつ病と診断されることもある。自己判断で切り分けようとしない

「疲れているだけだろう」「繁忙期だから仕方ない」。そう見過ごしているうちに、本人の状態がもう一段深いところまで進んでいることがあります。バーンアウト(燃え尽き症候群)は、単なる疲労と地続きに見えるため、気づいたときには対応が難しくなっていることが少なくありません。世界保健機関(WHO)の定義に基づく3つの切り口と、一時的な疲労やうつ病との違いを整理します。


見るべきは3つの次元 — 「疲れているかどうか」だけでは判断しない

世界保健機関(WHO)は、国際疾病分類の第11版(ICD-11)で、バーンアウトを「慢性的な職場ストレスが適切に管理されなかった結果として生じる症候群」と定義し、次の3つの次元で特徴づけています。

  • エネルギーの枯渇感・疲労感
  • 仕事への精神的な距離の増加、シニシズム(冷笑的な態度)
  • 職業上の効力感の低下

厚生労働省の「こころの耳」(働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)も、燃え尽き症候群の主要症状として「心身の疲労消耗感」「人と距離をとり感情的接触を避ける」「達成感の低下」の3点を挙げており、内容はWHOの3次元とほぼ対応しています。

疲労感は分かりやすい兆候ですが、それだけで判断すると、忙しい時期の一時的な疲れと見分けがつきません。見分けるうえで重要なのは、疲労感に加えて、残りの2つ、つまり相手や仕事への距離の取り方の変化と、自分の仕事ぶりへの評価の変化が、同時に現れているかどうかです。

3つの次元は、それぞれ次のような形で具体的なサインになって現れます。「周囲から見えるサイン」は部下・同僚の変化に気づく手がかりに、「本人の内的な変化」は自分自身をふり返る手がかりになります。

次元 本人の内的な変化 周囲から見える具体的なサイン
エネルギー枯渇感・疲労感 情緒的な資源を使い果たした感覚 休んでも疲れが取れない様子が続く、始業前からすでに疲弊している、これまで難なくこなしていた業務に時間がかかるようになる
精神的な距離感・シニシズム 仕事や関わる相手への態度が冷めていく 顧客・同僚への対応が事務的・投げやりになる、皮肉っぽい発言が増える、必要最低限のやり取りに留めるようになる
職業上の効力感の低下 「自分はもうだめだ」という無力感 些細なミスが増える、達成感を口にしなくなる、「意味がない」といった発言が増える

「疲れているだけ」との違い — 3つの兆候が続いているかどうか

一時的な疲労・繁忙期の疲れ

  • 特定の繁忙期・締め切りに紐づいている
  • その山を越え、休みを取れば回復する

バーンアウト

  • 特定の繁忙期・締め切りに紐づかず、時期を問わず現れる
  • 週末や休暇を挟んでも、3つの兆候が続いている

WHOの定義でも、バーンアウトは「慢性的な職場ストレスが適切に管理されなかった結果」と位置づけられています。この定義に沿って考えると、見分ける手がかりは、忙しさそのものの量ではなく、負荷の高い時期が過ぎたあとも3つの兆候が続いているかどうかです。異動や転職の直後で単に環境に慣れていないだけなのか、負荷が落ち着いても3つの兆候が続いているのかは、時間を置いて様子を見なければ判断がつきません。一定期間を経ても変化が続いているようなら、慣れの問題として片づけないほうがよいサインです。

うつ病との違い — 切り分けようとしすぎない

ICD-11は、バーンアウトについて「職業的文脈に特有の現象であり、生活の他の領域における経験を説明するために適用すべきではない」と明記しています。目安の一つは、兆候が仕事の場面に集中しているか、休日や趣味の時間にまで及んでいるかという点です。

ただし、厚生労働省「こころの耳」も「精神医学的にはうつ病と診断されることもあります」と述べているとおり、バーンアウトとうつ病は実際には重なり合うことが少なくありません。どちらであるかを言い当てることよりも、3つの次元の兆候に気づいた時点で、自己判断で切り分けようとしないことのほうが重要です。

気づいたら、次にすること

3つの次元の兆候に気づくことは、対応の出発点です。そこからどう声をかけ、どこにつなぐかは、社員の不調に気づいたときの対応フローの5ステップに沿って進めてください。放置すればするほど、バーンアウトが会社にもたらすコストは膨らんでいきます。早い段階で気づけるかどうかが、その後の対応の難しさを大きく左右します。何がバーンアウトを引き起こすのかを理解しておくことも、早期の気づきや再発の防止に役立ちます(バーンアウトの主な原因)。ここで示した3つの次元が、ある時点の状態を切り取ったものだとすれば、そこに至るまでの経過を段階として知っておくことも早期の気づきに役立ちます(バーンアウトが進行する12段階)。

※ 出典: 世界保健機関(WHO)「Burn-out an "occupational phenomenon": International Classification of Diseases」(2019年5月28日)。厚生労働省「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」用語解説「燃え尽き症候群」。久保真人「バーンアウト(燃え尽き症候群)ヒューマンサービス職のストレス」独立行政法人労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』No.558(2007年1月号)。

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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