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AIに心を預ける人が増えている──学術調査・自治体・医療現場が同時に示す「依存」のサイン

中央大学の調査、さいたま市の実証実験、専門外来の開設──2026年、複数の現場でほぼ同じ時期に浮かび上がった「AIと孤独」の実態を整理した。

東京メンタルヘルス株式会社 SMB事業部

生成AIを利用する人のうち「AIに恋していると思うときがある」と答えた人は、およそ6人に1人。中央大学の調査が示したこの数字は、AIが単なる道具を超え、心の拠り所になりつつある実態を映し出しています。同じ時期に、さいたま市はAIによる孤独・孤立対策の相談窓口を実証実験し、東京都内のクリニックはAI依存を専門に扱う外来を開設しました。学術・行政・医療という異なる現場で、ほぼ同時に同じテーマが浮かび上がっている──この構図は、職場のメンタルヘルスを考えるうえでも見過ごせない変化です。

1. 「6人に1人」という数字が示すもの

中央大学文学部の山田昌弘教授が2026年2月に実施した調査(全国20〜59歳、8,247人対象)では、生成AIを利用する人のうち「AIに恋していると思うときがある」と回答した人が約17%、およそ6人に1人に上りました。「恋していると思う」と答えた人の5割超が既婚者だったという点も、AIとの関係が一部の特殊な現象ではなく、すでに幅広い層に広がっていることを示しています。山田教授は、相談や愚痴をこぼすやり取りを重ねるうちに、相手に親しみを感じて好きになっていくプロセスがあると分析しています。

2. 自治体もAIを「話し相手」として活用し始めている

さいたま市は2026年3月から6月にかけて、孤独・孤立対策として傾聴に特化した生成AIによる24時間・匿名のチャット相談窓口「聴いてAI」を実証実験しました。政令指定都市として初めての取り組みで、解決策の提示より「まず話を聴く」ことに重点を置いた設計です。大阪府堺市でも、孤独・孤立の実態把握とAI相談窓口を組み合わせた実証事業が2025年12月から2026年3月にかけて行われました。行政がAIを孤独・孤立対策の一次的な受け皿として位置づける動きは、今後さらに増えていくと見られます。

3. 医療現場では、依存を専門に扱う外来まで登場した

2026年5月27日、東京都新宿区の早稲田メンタルクリニックは、AI依存症・AI誘発性精神病を専門に扱う外来を開設しました。院長の益田裕介医師は、開設の経緯について「AIを患者さんが使うようになっていた」ことを挙げています。依存に該当するかどうかの目安は「現実から目を背けるためならば、それは依存」だとし、仕事の問題を考えたくないからAIと会話する、仕事に行かずにAIを使う、といった状態を例に挙げました。AIをお酒に例え、「うまく使えばいい、悪く使うとダメ」とも述べています。

4. メディアでも同時期に取り上げられた

2026年7月には、AIとの恋愛・依存をテーマにした特集がインターネットテレビ局ABEMAの情報番組でも組まれ、AIとの対話を通じて生活が上向いた人、現実の人間関係を「煩わしい」と感じるほど依存が深まった人、双方の体験が紹介されました。研究・行政・医療で相次いでいた動きに、ほぼ同じタイミングでメディアも反応した形です。「AIと孤独」は、もはや一部の特殊な事例ではなく、社会全体で向き合うべきテーマになりつつあります。

5. 50名未満の企業・働く人にとっての示唆

これらの動きは、職場のメンタルヘルスとも無関係ではありません。相談相手をAIに求める人が増えているのは、裏を返せば、身近に安心して話せる相手が少ないと感じている人が多いことの表れでもあります。産業医や相談窓口の体制が手薄になりがちな50名未満の事業場やフリーランス・一人社長にとって、AIによる相談は、話す一歩を後押しする入口になり得ます。一方で、益田医師は、AIとの心地よい対話に慣れることで人間同士の摩擦に耐える力が落ち、「ハードな仕事や交渉に耐えられなくなる」人が増える可能性も指摘しています。AIとの対話だけで完結し、現実の人間関係や専門家への相談につながらないまま孤立が深まるケースがあることも、今回の一連の動きが示すリスクです。

統計ハイライト

  • 生成AI利用者の6人に1人:「AIに恋していると思うときがある」と回答(そう回答した人の5割超が既婚者)/中央大学 山田昌弘教授調査(2026年2月、8,247人対象)
  • さいたま市「聴いてAI」実証実験期間:2026年3月5日〜6月4日/政令指定都市として初の傾聴AI活用
  • 早稲田メンタルクリニック「AI依存症・AI誘発性精神病専門外来」開設:2026年5月27日

取締役 江原和比己 コメント

AIが心の拠り所になること自体は、悪いことだとは思っていません。身近に話せる相手がいない人にとって、AIが最初の一歩になっている側面もあるのではないかと見ています。

ただ、今回のような動きを見ていて感じるのは、AIとの対話が現実の関係の代わりになってしまうと、孤立がかえって深まりかねないということです。現実の人間関係には、思い通りにならない摩擦がつきものですが、その摩擦を通じてしか得られない関係性もあると、わたしは思っています。

WorkMindでは、AIによる相談を「一次受容」として位置づけ、AIとの対話をそこで完結させず、人とのつながりに戻っていけるようにすることを大切にしています。

※ 江原 和比己(えはら かずひこ)──東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

※ 本記事は2026年7月時点の公開情報に基づいています。インターネットテレビ局ABEMAの番組で紹介された個別の体験談は、当社独自に事実関係を確認したものではないため、本文では取り上げていません。

※ 出典: 中央大学文学部 山田昌弘教授の生成AIと恋愛に関する調査(2026年2月10日〜12日実施、全国20〜59歳8,247人対象。テレビ朝日系(ANN)報道・中央大学広報室公式Xより)/さいたま市「聴いてAI」実証実験(2026年3月5日〜6月4日、さいたま市公式発表・日本経済新聞報道)/堺市の孤独・孤立対策AI相談窓口実証事業(時事ドットコム/PR TIMES、2025年12月11日発表)/早稲田メンタルクリニック「AI依存症・AI誘発性精神病専門外来」(開設2026年5月27日、益田裕介院長note・クリニック公式サイトより)/インターネットテレビ局ABEMA「ABEMA Prime」(2026年7月放送。益田裕介医師が専門医として出演し、AI依存の判断基準等をコメント。放送回の内容はABEMA TIMESの記事〔Yahoo!ニュース配信、2026年7月4日・5日〕でも確認できる)

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