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従業員の『見えない不調』は量から質へ——67%増

相談件数はやや落ち着くも、心身の健康・長時間相談は増加——ピークは週末から水曜へ

東京メンタルヘルス株式会社 SMB事業部

ストレスチェックや上司との1on1では拾いにくい心身の不調は、職場の外でどう扱われているのか。当社が運営するLINEで使える無料AIチャット相談の2026年6月の実績を分析したところ、相談件数は163件で、2か月連続の最高更新が続いた5月からは減少しましたが、高水準は続いています。内訳では「心身の健康」の相談が67%増加し、恋愛・夫婦の割合は66.9%(前月71.3%)に低下しました。相談のピークも週末から水曜へ移っています。働く人のための職場メンタルヘルスサービス「WorkMind」では、こうした変化を一次受容の設計に反映させています。

データの背景

本データは、当社「恋愛と夫婦の悩み相談センター」が運営するLINEで使える無料AIチャット相談の利用ログを集計したものです。職場メンタルヘルスを直接対象とした相談窓口ではありませんが、利用者が匿名・無料で持ち込む悩みの内訳・時間帯・対話の長さは、従業員が「会社や上司には話さないが抱えている悩み」の傾向を示す手がかりになります。利用者の職業・雇用形態はデータに含まれないため断定はしませんが、相談のピークが週末から平日の水曜へ移る動きからは、働く時間を持つ層を含む利用が示唆されます。

  • 対象データ:当社「恋愛と夫婦の悩み相談センター」が運営するLINE無料AIチャット相談の利用ログ
  • 集計期間:2026年6月1日〜2026年6月30日
  • 比較対象:2026年5月(前月)
  • 集計対象:相談163件/利用者71人(重複を除いた人数)
  • 出典:東京メンタルヘルス株式会社 SMB事業部(恋愛と夫婦の悩みAIチャット相談 利用実績データより集計)

1. 「見えない悩み」の中心は関係性、ただし心身へ重心が移る

カテゴリの内訳は「恋愛の悩み」80件(49.1%)、「夫婦・パートナーの悩み」29件(17.8%)で、両者合わせて66.9%を占めました。前月(71.3%)からは低下し、代わって「心身の健康」が18件から30件(18.4%)へ67%増加しています。恋愛は93件から80件、夫婦は36件から29件へいずれも件数が減る一方、心身の健康だけが大きく伸びており、悩みの重心が関係性から体調・気分の変化へとわずかに移っています。職場では開示しにくい「見えない悩み」の器が、関係性だけでなく心身の不調へも広がりつつある動きと見ています。

「心身の健康」相談件数の前月比較

「心身の健康」相談件数の前月比較
件数
6月30件
5月18件

2. 週末から水曜へ——相談ピークの移動

相談の発生時刻は7時台・21時台がともに12件で並んで月間最多となり、朝と夜に2つの山ができました。曜日別では水曜が33件と最多で、これまで日曜・土曜に厚みが出ていた傾向から一転し、平日の水曜に山が生まれています。深夜帯(22時〜翌4時)の利用は24.5%(40件)で、件数はほぼ前月並み(41件)ながら、比率は前月(22.7%)から上昇しました。週の半ばに相談が集まる動きは、平日の業務の中で積み重なる負荷が、週末を待たずに言葉として表れている可能性を示唆しています。

平日の業務で負荷が積み重なる

週の半ばにかけて蓄積。

水曜に相談として表れる

曜日別で水曜33件が最多。

3. 短い相談ではない——対話はさらに深く

平均相談時間は約203分で、30分を超える長時間の相談は全体の51.5%(84件)に達しました。前月(約196分・45.9%)からさらに深まっています。件数は前月から9.9%減った一方、長時間相談の件数はほぼ前月並み(84件/前月83件)で、対話の総量を落とさず質を高めている構図です。1ターンで終了するライトな利用は7.4%(12件)にとどまり、多くの利用者が「話しながら整理したい」対話型の使い方を選んでいます。件数の増減だけでは見えない、対話の深まりが6月の特徴です。

4. 50人未満の組織にとっての示唆

2026年2月、厚生労働省は「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」を公表し、2028年4月施行の義務化に向けて実務整備が進んでいます。令和6年調査では、強い不安・ストレスを感じる労働者が82.7%に上る一方、対策に取り組む事業所は63.8%にとどまります。今回「心身の健康」の相談が67%増加し、長時間相談が5割を超えたことは、設問だけでは拾いきれない領域の広がりを示します。匿名・即時のAIチャット相談を入口としながら、そこで完結させず人とのつながりに戻っていける設計を持つことは、産業保健体制が手薄な小さな組織やフリーランス・一人社長にとって現実的な選択肢になり得ると考えています。

統計ハイライト

  • 6月の相談件数:163件(前月181件/前月比▲9.9%/直近1年で5月に次ぐ高水準)
  • 「心身の健康」の相談:30件(前月18件/+67%)
  • 関係性の悩みの割合:66.9%(前月71.3%)
  • 相談ピーク:7時台・21時台ともに12件/曜日は水曜33件が最多
  • 長時間の相談率(30分超):51.5%(84件/前月45.9%・83件)

取締役 江原 和比己 コメント

6月の相談件数は163件で、2か月連続の最高更新が続いた5月からは減少しました。わたしが注目しているのは件数よりも、悩みの中身が変化している点です。関係性の悩みの割合がやや下がる一方、心身の健康に関する相談が18件から30件へと大きく増えました。職場では開示しづらい悩みが、体調や気分の変化というかたちで匿名の場に持ち込まれているのではないかと見ています。

相談のピークが週末から水曜へ移ったことも印象的です。週の半ばに積み重なった負荷が、週末を待たずに言葉として表れているのだとすれば、ストレスチェックのような年1回の点検だけでは追いきれない変化だと感じています。長時間の相談が5割を超えたことも、AIが単なる検索の代わりではなく、感情を整理する場として使われている表れだと考えています。

働く人のための職場メンタルヘルスサービス「WorkMind」では、こうした傾向をAIチャット相談・人間カウンセラー相談・組織支援の設計に反映させていきたいと考えています。働く人が「話してもいい」と思える入口を、職場の内側だけでなく外側にも増やし、その小さな一歩を応援していきたいと考えています。

※ 江原 和比己(えはら かずひこ)——東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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