Insight

従業員の『見えない悩み』はAIに集まる──関係性の悩みが83.7%・夜20時台にピーク(2026年4月分析)

ストレスチェックでは把握しづらい悩みが、夜のスマホに集中する──AIチャット相談123件の分析

東京メンタルヘルス株式会社 SMB事業部
職場メンタルヘルスAIチャット相談50名未満企業産業保健

ストレスチェックや上司との1on1では把握しづらい「関係性の悩み」が、職場の外でどのように扱われているのか。当社が運営するLINEで使える無料AIチャット相談の2026年4月の利用実績を分析したところ、相談件数は123件と月次最高を更新し、内訳は「恋愛の悩み」と「夫婦・パートナーの悩み」で全体の83.7%を占めました。利用ピークは平日夜の20時台、深夜帯(22時〜翌4時)の利用は30.9%に達しています。職場ではほとんど可視化されない領域に、相談需要が集中している実態が浮かび上がります。働く人のための職場メンタルヘルスサービス「WorkMind」では、こうした傾向を踏まえ、関係性ストレスを含めた一次受容の設計を進めています。

データの背景

本データは、当社「恋愛と夫婦の悩み相談センター」が運営するLINEで使える無料AIチャット相談の利用ログを集計したものです。職場メンタルヘルスを直接対象とした相談窓口ではありませんが、利用者が匿名・無料で持ち込む悩みの内訳・時間帯・対話の長さは、従業員が「会社や上司には話さないが抱えている悩み」の傾向を示す手がかりになります。利用者の年代・職業・雇用形態はデータに含まれないため断定はしませんが、相談の時間帯分布には夜間のピークが明確に現れており、働く時間を持つ層の利用が示唆されます。

  • 対象データ:当社「恋愛と夫婦の悩み相談センター」が運営するLINE無料AIチャット相談の利用ログ
  • 集計期間:2026年4月1日〜2026年4月30日
  • 比較対象:2026年3月(前月)/2025年度(2025年4月〜2026年3月)通年
  • 集計対象:相談123件/利用者63人(重複を除いた人数)
  • 出典:東京メンタルヘルス株式会社 SMB事業部(恋愛と夫婦の悩みAIチャット相談 利用実績データより集計)

1. 「見えない悩み」の内訳──関係性で83.7%

カテゴリの内訳は「恋愛の悩み」70件(56.9%)、「夫婦・パートナーの悩み」33件(26.8%)で、両者合わせて全体の83.7%を占めました。次いで「その他」8件(6.5%)、「心身の健康」5件(4.1%)、「家族・親子の悩み」4件(3.3%)、「職場の悩み」2件(1.6%)、「婚活・出会いの悩み」1件(0.8%)と続きます。職場のストレスチェックや産業医面談でカバーされる「職務ストレス」「心身の不調」とは異なる、関係性領域に相談需要が強く集中している構図です。これらは従業員自身が職場で開示しにくい悩みであり、上司や同僚も把握しづらい一方、業務集中度や離職意向に影響を及ぼし得る領域です。

2. 夜20時台にピーク──「持ち帰る悩み」の時間帯

相談の発生時刻は20時台(13件)が月間最多となり、23時台(11件)・0時台(8件)と夜にかけて相談量が多い分布でした。深夜帯(22時〜翌4時)の利用は30.9%(38件)に達し、当社が把握する2025年度通年の同帯利用比率(約25.0%)を上回るペースで増加しています。曜日別では水曜が23件、木曜21件、月曜18件と平日に厚みがあり、土曜18件・日曜19件と週末も一定の需要があります。日中の業務時間中ではなく、職場を離れた夜にスマホで相談する行動パターンは、関係性ストレスが「業務終了後に処理される」性質を持つことを示唆しています。

3. 短い相談ではない──平均142分の対話

平均相談時間は約142分、平均ターン数は11.4回でした。1回の相談で30分を超える長時間相談は全体の42.3%(52件)に上ります。一方、1ターンで終了するライトな利用は10.6%(13件)に留まりました。多くの利用者がAIに対し「答えをすぐ返してほしい」検索型ではなく、「話しながら自分の気持ちを整理したい」対話型の使い方を選んでいます。リピート率は33.3%(21人/63人中)で、一度相談した利用者の3人に1人が再訪している計算になります。表層的なやり取りではなく、感情整理・状況の掘り下げまでをセルフケアの一部として担う使われ方が定着しつつあります。

4. 50名未満の組織にとっての示唆

ストレスチェック制度は労働安全衛生法の改正により50名未満の事業場にも実施義務の拡大が決まり、施行に向けた準備が進んでいますが、設問は職務ストレスを中心としており、関係性ストレスの可視化は構造上難しい領域です。今回のデータが示す「相談の8割超が恋愛・夫婦」「ピークは平日夜・深夜帯」「平均142分の対話」という特性は、産業医面談や上司の1on1だけでは到達しづらい層が一定規模で存在することを示しています。匿名・即時・夜間にアクセスできるAIチャット相談を一次受容として整備し、必要に応じて人間の専門家へ接続する二段構えが、従業員規模の小さい組織やフリーランス・一人社長にとって現実的な選択肢になり得ると考えています。

統計ハイライト

  • 4月の相談件数:123件(前月 79件 / 前月比 +55.7%・約1.56倍/月次最高更新)
  • 関係性の悩みの割合:全体の83.7%(恋愛56.9%+夫婦26.8%)
  • 相談ピーク時間帯:20時台 13件/深夜帯(22時〜翌4時)30.9%(38件)
  • 平均相談時間:約142分/平均ターン数 11.4回/長時間相談(30分超)42.3%(52件)
  • 利用者:63人/リピート率 33.3%(21人)

取締役 江原和比己 コメント

4月の集計で、AIチャット相談の8割超が恋愛・夫婦の悩みに集中し、利用のピークが夜の20時台から深夜帯にかけて分布しているという結果は、職場メンタルヘルスの設計を考えるうえで示唆的だと感じています。関係性の悩みは、勤怠や業務パフォーマンスに影響しやすい一方、ストレスチェックや上司の1on1では本人が開示しづらく、組織側からも把握が難しい領域です。今回のデータは、従業員が「会社では言えないけれど抱えている悩み」を、匿名・即時で扱える場所に持ち込んでいる実態を示しているのではないかと見ています。

平均142分・11.4ターンという対話の長さは、軽い相談ではなく、自分の気持ちや状況を整理する時間として使われていることを意味します。AIだけで完結する場面もあれば、整理を進めるうちに人間の専門家による継続的な支援が必要になる場面もあります。AIで一次受容し、必要に応じて人間カウンセラーに接続する二段構えは、産業医や保健師の体制が手薄になりがちな50名未満の事業場やフリーランス・一人社長にとって、現実的な選択肢になると考えています。

働く人のための職場メンタルヘルスサービス「WorkMind」では、こうしたデータから読み取れる傾向を、AIチャット相談・人間カウンセラー相談・組織支援の設計に反映させていきたいと考えています。働く人が「話してもいい」と思える入口を、職場の内側だけでなく外側にも増やしていくことを目指していきたいと考えています。

※ 江原 和比己(えはら かずひこ)──東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

職場メンタルヘルスについてのご相談

研修・カウンセラー派遣・ストレスチェックなど、貴社の状況に合わせた対応をご提案します。