心の健康づくり

職場のウェルビーイングを高める施策集

職場のウェルビーイングを高めるには、何から手をつければいいのか。経済産業省「健康経営優良法人」認定制度が示す評価項目をもとに、中小企業が実際に着手できる9つの施策を整理します。

江原 和比己(東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー)

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この記事の要点

  • 経済産業省の健康経営優良法人(中小規模法人部門)の評価項目のうち、働き方・職場の関係性・個々の事情に関わる9項目が施策の手がかりになる
  • 9項目は「働き方の土台を整える」「関係性を育てる」「個々の事情に配慮する」の3つの区分に分かれ、それぞれ3つの施策からなる
  • ヘルスリテラシー向上の教育機会は、まとまった研修でなくても朝礼や社内報で知識を共有する程度から始められる
  • 9項目すべてを同時に始める必要はなく、認定基準自体も項目数を絞った特例区分を設けている。自社の課題に近い1〜2項目から広げる

職場のウェルビーイングのうち、会社が主体的に関与できる要素は限られています(職場のウェルビーイングを支える5つの要素で扱っています)。その範囲で何から着手すればいいかを考えるとき、手がかりになるのが経済産業省が推進する「健康経営優良法人」認定制度です。中小企業が実際に取り組むべき施策を評価項目という形で具体化しており、そのうち働き方や職場の関係性、個々の事情への配慮に関わる9項目を軸に、施策の全体像を整理します。

施策の全体像 — 健康経営優良法人が示す9つの評価項目

健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件には、従業員の健康保持・増進に関する複数の評価項目があります。このうち食生活の改善や運動機会の増進、感染症予防、喫煙対策といった身体面の生活習慣病予防を除き、働き方や職場の関係性、個々の事情への配慮に関わる9項目を、次の3つの区分に整理しました。

区分 評価項目
働き方の土台を整える ヘルスリテラシー向上のための教育機会/ワークライフバランスの推進/仕事と育児・介護の両立支援
関係性を育てる コミュニケーションの促進/長時間労働者への対応/心の健康保持・増進
個々の事情に配慮する 女性の健康保持・増進/高年齢従業員への配慮/私病の治療と仕事の両立支援

働き方の土台を整える3つの施策

ヘルスリテラシー向上のための教育機会

ヘルスリテラシー(健康に関する情報を理解し、日々の行動に活かす力)を高めるため、管理職または従業員に教育の機会を設ける取り組みです。まとまった研修という形でなくても、朝礼や社内報で基本的な知識を共有する程度から始められます。

ワークライフバランスの推進

適切な働き方の実現に向けた取り組みで、有給休暇の取得を促す、残業時間を管理する、始業・終業時刻に柔軟性を持たせるといった対応が含まれます。会社が用意したこの時間を、従業員自身がどう活かすかについては、ワークライフバランスを保つための4つの工夫で扱っています。

仕事と育児・介護の両立支援

育児や介護をしながら働く従業員が、無理なく仕事を続けられるようにする取り組みです。2025年に施行された育児・介護休業法改正のポイントを含め、育児・介護と仕事の両立を支える、上司・同僚にできることで扱っています。

関係性を育てる3つの施策

コミュニケーションの促進

職場の活性化につながる、日常的なコミュニケーションの機会を増やす取り組みです。1on1や雑談の時間を意図的に確保することも含まれます。話すこと自体が持つ効果は対話・相談がもたらすメリット、管理職の聴き方は部下の話を聴けるマネージャーになるにはで扱っています。発言しやすい空気づくりという観点では、心理的安全性を高める3つの実践も関わりの深い施策です。

長時間労働者への対応

長時間労働が続く従業員に対して、面談や業務量の見直しなどで対応します。長時間労働を放置した場合に会社が負うコストはバーンアウトが会社にもたらすコスト、早期に気づくための兆候はバーンアウトの兆候の見分け方にまとめています。

心の健康保持・増進

メンタルヘルス不調の予防や早期発見に向けた取り組みです。厚生労働省の指針が示す「4つのケア」の枠組みはラインケアとは、不調に気づいたときの対応フローは社員の不調に気づいたときの対応フローで扱っています。

個々の事情に配慮する3つの施策

女性の健康保持・増進

月経随伴症状や更年期など、女性特有の健康課題への理解を深め、相談しやすい環境を整えます。

高年齢従業員への配慮

高年齢の従業員の体力や健康状態に応じて、業務内容や働き方を調整します。

私病の治療と仕事の両立支援

がんなど、業務によらない病気(私病)の治療をしながら働く従業員を支える取り組みです。メンタルヘルス不調による休職からの復職支援については、復職支援の基本で扱っています。

50人未満の会社での実践 — まず何から手をつけるか

9項目すべてを同時に始める必要はなく、優先順位をつけて段階的に取り組めば十分です。健康経営優良法人の認定基準自体も、項目数を絞った特例区分を設けるなど、一度に多くを求めない設計になっています。人事の専任担当者を置けない会社ほど、まず自社の課題感に近い1〜2項目——長時間労働が目立つなら「長時間労働者への対応」、相談の声が上がりにくいなら「コミュニケーションの促進」——から着手し、定着してから次に広げるという順番が現実的です。どの要因を優先すべきか判断に迷う場合は、職場のストレス要因を把握する方法も参考になります。

※ 出典: 経済産業省・日本健康会議「健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件」

江原 和比己(えはらかずひこ)—— 東京メンタルヘルス株式会社 取締役/産業カウンセラー/日本ブリーフサイコセラピー学会 正会員。IT領域で約25年のキャリアを経て産業カウンセラーに転身。AIを活用したメンタルヘルス支援の社会実装に取り組む。

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